2009.08.17 ヤスシくん part2
稲田先生のちょっとバカにした口調に僕はムキになって言い返した。
「南の方のカシワです。汽車に乗っておばあちゃんといっしょに行ってきた」
「そうかー、カシワかー。どこらあたりかなー?」
稲田先生は、僕の曖昧な話にはついて行けない、という態度で僕の書いた夏休みの絵日記を見ていた。

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昼下がりの漁港は静かだ。
朝早くに漁に出た舟は昼前には帰ってきて、
夕方からの出航に備えて男達は昼寝をしているし、
女達も昼ご飯の片づけを済ませて家でテレビをぼんやり見ている。
そして、僕たちはヤスシ君の「おかーちゃん、海に行ってくるネー」の合図と共に
海水パンツに履き替えて、裸足で海に向かった。
朝のうちは大人の手前もあって、宿題をするフリをして
家の中で静かにしていた僕たちはこの時間を待っていたのだ。
海といっても目の前の港だ。
ヤスシ君が防波堤の端まで走っていく。そして、なんの躊躇もなく海に飛び込んだ。
僕はといえば、恐る恐る階段状になっているところからポチャンという感じで海に飛び込む。
ヤスシ君が「何やってるんだよー、怖いのかよー」と近寄ってきて、
ケラケラ笑いながら僕のことをバカにする。
「ここから飛び込むのが一番おもしろいんだぞー」と
今度は係留されている漁船の縁から飛び込んだ。
僕は勇気を出してヤスシ君の後に続く。
海面にたたきつけられた衝撃と共に、耳の近くを通り過ぎる泡の音が聞こえる。
浮き上がった僕は思わず「ヒャー」っと言葉にならない声を発してしまった。
「おもしろいだろー?」とヤスシ君が叫ぶ。
それから僕たちは「もう、帰っておいでよー」というヤスシ君のおかーちゃんの声が聞こえるまで、
何回も何十回も海に飛び込み、ケラケラと笑っていた。


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