2012.03.07 神の手
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Handprint (フランス・ショーヴェ洞窟)

芸術新潮の今月号に紹介されていて、すごーく興味をもったので、
「世界最古の洞窟壁画 3D 忘れられた夢の記憶」という映画を、わざわざ大阪まで見に行ってきた。
「わざわざ」と書いたのは普通の映画のように、全国ロードショーとはいかない代物らしく、
大阪、京都の一部映画館でしか公開されていないからだ。
まあ、そりゃそうだ。考古学のドキュメンタリー映像を、いくら3Dにしたからといって
それほど話題にもならないだろう。好きで見に行った私でさえ、途中居眠ってしまった。

作品解説
「フィッツカラルド」「神に選ばれし無敵の男」の鬼才ベルナー・ヘルツォークが、
現存する世界最古の壁画を有する南仏・ショーベ洞窟の内部を3Dで撮影したドキュメンタリー。
1994年に発見されたショーヴェ洞窟の奥には3万2000年前に描かれた壁画が奇跡的に当時のまま現存していた。
貴重な遺跡を守るため普段は研究者や学者にのみ入場が許可されるショーヴェ洞窟に、
ヘルツォーク監督率いる撮影隊が入り、3Dカメラによる撮影を敢行。壁画を描いた古代の人々へ思いを馳せる。(映画・comより転載)

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私は、「絵画芸術」というものが、人類の進歩とともに「進化」していると勘違いしていたようだ。
なーんも変わっちゃいない。なーんも進歩していない。変わったのは材料だけだ。
見ていて現代人の画家が描くドローイングとなんら変わらない。
・・・・というか、石の壁に描かれた線描の痕跡が、描いた人間の(簡単に言うと)センスの良さに、
マティスやピカソ、ユトリロの線描に相通じるところがあるのではないか、と思わず身を乗り出してしまった。
特に、上図のライオン(当時はこの地域にも生息していたそうだ)と牛の図は素晴らしい。
立体感をだそうとした形跡が見られるし、それぞれの形を明瞭にするため、岩盤の表面を削って「白」くしている。
それに、解説では「動き」の表現として、連続した形を描いたのではないか、とも説明していた。
これは単なる形の描写ではなく、「作者」の意思が介在した「表現行為」として見ることができるし、
それは、これ以降数万年と続く「芸術家」の営みと同じではないか!

調査によると、この洞窟壁画は光の入らない暗闇の中、火を頼りに描かれたらしく、映像を見ていると
洞窟の凸凹を巧みに利用して、動物の動きや「物語性」までも表しているのではないか、と想像できた。
それに、入り口近くには、一人の人間の手形(ハンドプリント)が多数押された壁があり、
奥まった場所には動物の頭蓋骨が残された「祭壇」らしき痕跡も残っている。
「音楽」的行為としての楽器「縦笛」も発見されている。・・・・そして、創造力はかき立てられる・・・・
この地で営まれていた人の集団が、光の入るおおきな洞窟広場に集まり、一人のシャーマンが奥まった暗闇で
地霊に祈りを捧げる「祈りの場」・・・世界に数ある宗教施設の原形が、もう3万2千年前に完成していたことになる。

映画の作者、ベルナー・ヘルツォークは、最後に、洞窟壁画のある場所から数キロしか離れていない
原子力発電所と、そこで生産された余剰エネルギーの再利用で運営されている熱帯環境の「ワニ園」を
撮影して映画のエンディングとしている。

とても退屈な映画・・・その印象はぬぐえない。
でも、映画ならではの大画面とちょっとリアルに見せてくれる3Dは、
古代の神の手による痕跡の生っぽさを私達に「アートの起源」(by 杉本博司)としてを見せてくれる。
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