2015.03.25 トリビュート浄瑠璃寺の春
浄瑠璃寺の春

 この春、僕はまえから一種の憧れをもっていた馬酔木(あしび)の花を大和路のいたるところで見ることができた。
 そのなかでも一番印象ぶかかったのは、奈良へ著(つ)いたすぐそのあくる朝、途中の山道に咲いていた
蒲公英(たんぽぽ)や薺(なずな)のような花にもひとりでに目がとまって、なんとなく懐かしいような旅びとらしい
気分で、二時間あまりも歩きつづけたのち、漸(やっと)たどりついた浄瑠璃寺の小さな門のかたわらに、丁度
いまをさかりと咲いていた一本の馬酔木をふと見いだしたときだった。
 最初、僕たちはその何んの構えもない小さな門を寺の門だとは気づかずに危く其処を通りこしそうになっ
た。その途端、その門の奥のほうの、一本の花ざかりの緋桃(ひもも)の木のうえに、突然なんだかはっとする
ようなもの、――ふいとそのあたりを翔かけ去さったこの世ならぬ美しい色をした鳥の翼のようなものが、自
分の目にはいって、おやと思って、そこに足を止めた。それが浄瑠璃寺の塔の錆さびついた九輪くりんだった
のである。
 なにもかもが思いがけなかった。・・・・・

002-9052.jpg
FUJI X-E1 with XF35mmF1.4 R
堀辰雄の一文「浄瑠璃寺の春」の冒頭。高校の現代国語の教科書に載っていた文章です。
内容などはまったく覚えていないに、この題名と文章のかたわらに載っていた山門の写真だけは、
妙に印象に残っていて、40年ぶりに、勉強ではなく純粋に再読。堀辰夫のあこがれた春の大和路。
その文章にあこがれたアタクシはひとり、春の浄瑠璃寺、当尾(とうの)の里周辺を散策してきた。
ま、一種のトリビュートか?
Secret

TrackBackURL
→http://washiaya.blog72.fc2.com/tb.php/2356-e7bf1021