2015.09.19 ティルマンスの正しい見方
ドイツ出身の写真家ヴォルフガング・ティルマンス・・・・
ワタクシが2年前のグループ展で展示表現をパクった写真家。
その時は、印刷物でしか、その容体を把握できなかったが、ついに!
その全貌の生作品「「Your Body is Yours」を国立国際美術館で見てきたのだ。
本来ならすぐにでも行きたかったのだが、図録ができていない、という展覧会としては珍しい状況が
長く続いていたので行きそびれていたが、閉会一週間を切って、「こりゃまずいぞ」と仕事をさぼって行ってきた。
平日の午後だというのに、なんという人込み。同じ会場で、わが師・杉本博司、それにアンドレアス・グロスキーと、
写真家の重鎮二人の個展を見たが、この二人より圧倒的集客力。
まあ、基本的には若い世代が中心だが、それほど、この写真家に興味を持つ人がいるとは驚きだった。

この写真家の魅力はなんだろう?
写真を使ったインスタレーションっていうのが、アタクシの琴線に触れ、興味を持った作家ではあるが、
写真単体で見ていても、それほど決定的瞬間でも、綺麗でもなく、なんのこっちゃわからない写真だ。
だから、紙媒体で見ていてもそれほど魅力的ではなかった、というのが正直なところ。
しかし、この何のこっちゃわからない一連の写真の大小を、展示スペースの流れに沿って見ていくと、
それも写真との距離をとったり、狭めたり、小さな作品を遠目に見たり、大画面の一部を凝視したり
していると、なんだか彼の脳内の記憶や思考を追体験しているような、そんな不思議な感覚になった。
そんな風にこの展覧会を見ている自分は、昔映画であった「ミクロ決死隊」の血球に乗って血管の中を
浮遊する隊員。作家の紹介文に・・・展示空間を強く意識し、異なるサイズの写真を、額装を施さずに
まるでイメージが泳ぐがごとく自由に展示する斬新なインスタレーション・・・とあったが、まさしく、浮遊す
るイメージを、泳ぐがごとく見るととても楽しい(楽しかった)。それに、もうひとつ面白い鑑賞の仕方を
やってみた。それは、展示している壁面を斜め越しに見るのだ。普通、作品を見るときは、その作品に
正対して見るものであるが、広いスペースを区切り、入り組んだスペースに展示された作品を、一つ
一つ正面から見るのではなく、視点を隣の部屋の作品に置いて、視野に入った作品全部を見るっていう
見方をすると、白い壁面に点在するティルマンスワールドの美しさが充分理解できるんじゃないだろうか
(理解できた)

なんて言えばいいんだろう?
写真という媒体を使っているが、写真にこだわっていない、というか、自身の脳内を視覚化し、提示する
装置の道具がたまたま写真であるだけで、それらが見る者(この展覧会に参加する者)の脳内とシンクロ
する心地よさのようなもの。ワタシはワタシであるが、ワタシはアナタでもある・・・みたいな。
img405.jpg

販売が延期されていた図録も買った。なかなか凝ったつくりではあるが、少し残念だったのが
展示されていた作品と図録の作品が、かなり食い違っていたこと。
想像するに、印刷原稿に載る作品が、展示計画が途中でどんどん変化していって、印刷原稿の差
し替えが間に合わなかったからだろう。もし、その想像が当たっていたら、この食い違い
もまたインスタレーションという手法のライブ感が感じられて一興である・・・・かも。
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