2016.07.30 ストラツク!バッターアウト!
まったくの予備知識なしに、知らなかった事に出会うと、良きにつけ悪しきにつけ何がしかの興奮状態に
陥る。悪しきことへの出会いはご免こうむりたいが、良き場合は大歓迎。しかし、なかなか出会うことはない。
新しい音楽や美術関係の出会いは、こちらの長年の嗜好というものがあるから、自分の好みに傾倒しがち
でこちらから探しに行くことが多く、あちらからやってくることは非常に少ない。だから、歳をとると、新しい作
家(アーティスト)と出会って興奮する、ということも少なくなってしまった。

DIC川村記念美術館で開催されている「サイ・トゥオンブリーの写真-変奏のリリシズム-」を見に行って
きた。見に行ってきた、というと自ら行ってきたように聞こえるが「連れて行ってもらった」というのが正しい。
連れて行ってもらたったから、この企画展もほとんど下調べもせず、どんな作家なのかさえ知らない、とい
うほぼ予備知識なしの真っ白な状態での鑑賞となった。そして、興奮した。アタクシ的、ド・ストライク!
作家の概要は美術館のサイトを見ていただくとして、「そうそう、こんな感じで見たいんだよ」っていう写真。
写真家の写真じゃないから、テーマを持った具体的な意味のあるモチーフでない。モチーフは身の回りの
モノ。写真に写されたその他愛もないモノをどう見ているか、というところに共感し、興奮した。

ポラロイドカメラで撮影しているモチーフは、ピントが合ってなく、具体的な形さえわからないまでにボケ
た写真さえある。一つのモチーフを焦点距離を合わさずに前後して撮ったりもしている。撮っている対象
になんだかの意味や説明的な要素もなく、作者は視点のズレを楽しんでいるかのようだ。そんな遊び、
無意識にしませんか?例えば、目の前のコップをある距離で見るとピントが合ってますよね。その合った
ピントのまま視点をどんどん近づいてみたり、離してみると、その図像がピンボケの状態になる。そんな
遊び。アタクシはド近眼だから、ピントの合う幅が狭く、裸眼でモノを見るとこんなことになるんですけど。
そういう観方をポラロイドカメラで撮影している。それを、厚紙にカラードライプリントという手法でプリント、
図像の下にはサインとエディションナンバーが鉛筆で書かれていて、写真というより版画に近い作品。
「ドライプリント」というのはどんな手法だろう。ネットで調べてもズバリの答えは見つからない。
作品を子細に見てみると、オフセット印刷?現代的機械ならレーザープリンターで刷った感じ。
もう、そこまですると「写真」ではないのかもしれない。いや、プリントしたインスタグラムか?
サイトの解説を引用すると・・・
・・・・夢の記憶をたどるような親密でもどかしい視覚体験を促すものです。自らを「ロマンティックな象徴
主義者」と称したトゥオンブリーは、現実を主観のヴェール越しに写すため、あえて作品に盲目性を取り
込んだと考えられます。・・・・
図録の解説を読んでいると、この作家は暗闇の中で作品を制作する、というようなことをしていたそうな。
見ることの難しい状況で図像を作るということは、見えないことで、脳みその中のイメージを表出させよう
とすると、主観的要素が生まれる、というか頼らざるをえないというか。、その延長線上でカメラの図像を
使うとなると、このような写真になるということか。
それにしても、これら作品が、B4サイズ程のシンプルな額縁に入れられ、広々とした白い会場に100点
ほど展示されていたが、一つ一つの作品は小さくても、十分見ごたえのある展示で、いつまでもいたい、
と思える展覧会は久しぶりだった。というか、全部欲しい。そして、最後に作者の言葉が書かれていたが、
これがまた良い・・・・・
【歳をとると、始まりの事柄に戻っていかなければならないことがわかってきます。あるいは感傷的になれる
ものや何かへと。色々な意味で人生が閉じ、物事が簡単にはいかなくなり、わくわくすることもなくなると、
まあ、どうあらわしてもらってもかなわないですが、そうなるとノスタルジックになっていくものです。】

・・・・うーむ、ストラツク!バッターアウト!・・・・まいりました。

img58111.jpg
 静物 1951年 [ブラック・マウンテン・カレッジ] ポストカードをスキャン
この作品は大学時代でのピンホールカメラを使っての習作のよう。同じモチーフを組み合わせを変え
て何点か撮影している。「ブラック・マウンテン・カレッジ」というのは作家が通っていた大学。イタリアの
画家モランディを意識した、考えられた構成であるのがわかる。輪郭の柔らかい表情が実に優しく、ピ
ンホールカメラでないと出せない味わい。モノクロではあるが、プリントは少しクリーム色に変色し(そん
な技法か?)、それがなおさら情緒的でアーティスティック。欲しい!

img584.jpgimg584-1.jpg
 無題 [ガエータ] 1994年 Edition 4/6 図録をスキャン
これはポラロイドカメラで撮った作品。ズッキーニの花か?展覧会では一つ一つ違う額に入れられ、隣
あって展示されていた。これ以外にも、対象を上下に分割して撮っている作品があったり、同じ場所の
風景を、同じ構図で違う日に撮ったのを並べて展示していたのを見て、自分が最近はまっている撮り方
に似ていたのでうれしかった。「Edition 4/6」というのは頒布用に6枚プリントしたなかの4枚目ということ。
写真作品ってエディションナンバーってないのかな?写真の裏にシールかなんかで、作者名・エディショ
ンナンバー表示するのかな?
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